こんにちは。大関です。
もう7月になり日差しが強い日が多くなってきましたね。
こんな季節にはWORKOUTで鍛えた体をビーチで見せびらかせたい人が大半だと思います。
ただ僕は夏の晴天を見ると思い出す話があります。
それが『車椅子JK「助けて…押してるこの人知らない人です」』という話しです。
この話は2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)内で書かれたものですが人を惹きつける文章です。
ではご紹介します。
2ちゃんねる屈指の名スレッド『車椅子JK「助けて…押してるこの人知らない人です」』
2021年8月21日。
晩夏にさしかかった頃『車椅子JK「助けて…押してるこの人知らない人です」』というスレッドが立てられました。
しかしスレ主はスレッドのタイトルと「みたいな話をひとつ」と書き込んだきり、書き込みませんでした。
スレ主としては「スレッドタイトルのような話を聞きたいから自由に書き込んで」というスタンスです。
しばらくすると「気まぐれな小旅行のつもりだった」と書き込む人が現れます。
この物語の主人公は日々のストレス発散に旅行をし、港町を訪れていました。
しかし飲食店は閉まっていて、いつもとかわらないファストフードを食べています。
ただいつもと違う町並みや風情に触れて、いつも食べているファストフードでも楽しめていました。
そしてどこに向かうでもなくブラブラと歩き、入道雲を眺めながら線路沿いの道を歩いていました。
とても暑い時間帯なので歩いている人も走っている車もいない1本道。
その道の先に何かが揺れているのを見つけたようです。
どんどん近づくとそれは車椅子に乗っている少女とその車椅子を押す男性でした。
陽炎が揺らめく道を二人はうなだれながら移動し、車椅子がキイキイと鳴る音が辺りに響いていました。
車椅子が近づいて来た時。
「助けて」
この声は耳元で喋っているのかと疑うほどに明瞭に聞こえたと言います。
驚いていると「助けて…押してるこの人知らない人です」
主人公は立ち尽くし、呆然とし、どっと汗が吹き出しました。
視界の端には車椅子に乗った少女のすがるような顔が見えます。
「あの…」勇気を出して車椅子を押す男性に声をかけると。
「気にしないでください」
その声に怯みましたが「あ、あの!その子の知り合いじゃないならご家族の所に!」
「気にしないでください」
先ほどよりも語気を強めた男性は振り返りましたが、その目からは涙が流れていたようです。
そして「この子は私のせいなんです。私のせいで、足も記憶も!私のせいで!」と言います。
男がそう言っている時も車椅子の少女は「やだ…信じないで」と言いますが、主人公はそれ以上追及できませんでした。
主人公は2人を見送った後、交番に行きます。
対応してくれた警官に「不審者かな。不審者を見ました」と言います。
警官は冷蔵庫の中からやかんを取り出し、麦茶をいれてくれながら詳細を聞こうとします。
「お兄さんこの辺の人じゃないね。旅行?」など世間話もしながらの質問です。
「特徴は?」
「中背、っていうんですかね、170くらいで瘦せ型で、日に焼けてて…あ、あと」
「……車椅子を押していた?」
これから言おうとしていたことを警官が言い当てきょとんとしながら「はい」と答えると、警官は鉛筆の端についた消しゴムで机をトントンと叩き始めました。
次の瞬間、ニッコリと笑顔になった警官は「パトロールもしっかりするけど、お兄さんもあまり変な人に近づかないようにね」と言いました。
警官の表情の変化が気になり「車椅子を押してたあの男、不審者じゃないんですか」と質問してみます。
すると警官はピリッとした表情をしますが時計を見て「ちょうど休憩しようとしてたんだ。煎餅好き?」と言って詳細を話してくれました。
警官によると男は港町では有名な人物で、奇抜な家に住んで高級車を乗り回しているアーティストでした。
海岸でよく絵を描いており、警官が話しかけると常人には理解しがたい芸術の話や娘の話をしてくれたようです。
近寄りがたい人物ではなくとても子煩悩で、娘の話をする時はとても穏やかにニコニコしながら話していたようです。
娘は一人暮らしをしており、男は都会まで迎えに行きましたが、帰りに事故に遭ってしまいました。
男には怪我が1つもありませんでしたが、娘は足が動かなくなり、記憶を失ってしまいました。
娘が退院してからは線路沿いを散歩して、よく記憶を無くした娘に警官は助けを求められたようです。
その度に警官は「今によくなるよー。思い出すよー」と元気づけていたようです。
そんな日々を過ごしているうちにパニックも起こさなくなって会釈もするようになり、警官は「あと少しで笑顔も見れるかな」と楽しみにしていました。
そんな矢先、2人揃って電車にはねられてしまいます。
家からは2人分の遺書が発見されました。
遺書には最期まで分かり合えなかったことが記されています。
その事を知った近所の人からはたくさんの花が手向けられたと言います。
警官は「時々、こういう暑い日にね「すれ違った、助けを求められた」って話を聞くんだよ」と言いました。
そして「もしあの親子なら、早く天国で楽になって欲しいと心底思うよ、うん。」と説明してもらいます。
主人公は交番を出て、太陽が照りつけ陽炎が揺れる道を歩きます。
そして個人商店で飲み物を買って線路沿いの道を歩くと道の端に花束があることに気づきます。
そこにサイダーと機械油を置いて手を合わせました。
車椅子の音はもう聞こえなかったという話です。
最初は誘拐犯かと思いきや、精神的に追い詰められた親子と思いきや悲しい亡霊だったという話です。
物語序盤で「助けて」と耳元で喋っているように主人公が感じているのが実は実体を持たない霊であるということの布石だったのかなと思います。
この物語は2ちゃんねる内の原文では主人公目線で描かれていて、細かい心情や情景描写がとても俊逸なので気になったら原文を読んでみてください。
しかし「車椅子の少女を誘拐するなんてそんな現実離れしたことはやっぱり起きないよね」とここまで読んだ人は思うと思います。
現実に起きた『車椅子JK「助けて…押してるこの人知らない人です」』
2ちゃんねるのスレッドが立つほぼ3年前の2018年8月20日。
鈴木みそさんという漫画家さんがTwitterで車椅子に乗った女子高生から「助けてください。この人知らない人です」と声をかけられたという話を投稿しています。
時期としてはTwitterの投稿の10年前ほどに東京の新宿で、制服を着た女子高生に「助けてください」と声をかけられたと言います。
最初は「段差が超えられないのかな」と思って近づきました。
すると車椅子を押している男性が睨み付け「おまえはあっちへいけ!関係ねぇ」と言います。
それを聞いて鈴木みそさんは混乱しますが女子高生が「この人知らない人です」と言いました。
そこで改めて「この人は知らない人で勝手に押してるの?」と聞き女子高生は「そうです」と答えました。
車椅子を押していた男は逃げようとしましたが鈴木みそさんは「おおい!待てや!」と追いかけます。
そして当時のガラケーを出して「あなたの顔は撮りました。警察に行きますよ」というと車椅子を離して逃げていきました。
実際写真を撮る余裕はなかったようです。
その後、鈴木みそさんは漫画の取材でホストクラブに行き、ヒーロー扱いされてとても盛り上がったようです。
そして漫画にするとあまりにも嘘くさいので漫画にはせずTwitterで投稿するにとどめたということです。
こういった話を聞くとWORKOUTをする目的が明確になりますね。
誰かのために筋肉は使いましょう。